YES社会保険労務士事務所

労務監査

労務監査とは

労務監査とは、企業の労働環境や人事労務管理の状況を総合的に点検し、法令順守や運用面での課題を明らかにするための取り組みです。就業規則や労働条件通知書の適正性、労働時間管理、安全衛生管理、社会保険手続きなど、労務管理に関わる幅広い項目を監査対象とします。

労務監査を行うべき必要性や理由

労務監査は、企業が健全な労務環境を維持し、法令順守を徹底するために欠かせないプロセスです。労働基準法や育児介護休業法、労働安全衛生法などの法改正が頻繁に行われる現代において、企業は最新の法規制に対応しなければなりません。これに対応できていない場合、行政指導や労働トラブル、最悪の場合には訴訟リスクが生じる可能性があります。

さらに、昨今注目されている人的資本経営の視点からも、労務監査は重要な役割を果たします。人的資本経営とは、従業員のスキルや経験といった“人”を企業価値の中核として捉え、持続可能な成長を目指す経営戦略です。健全な労務環境の整備は、従業員の生産性向上や離職率の低減に繋がり、結果として企業の競争力を高める要因となります。

労務監査の実施方法

労務監査は、以下のプロセスで実施します。

  1. 資料収集
    企業の現状や課題を把握するために、経営者や人事担当者とのヒアリングを行います。また、労務関連の各種資料(就業規則、労働契約書、給与台帳、勤怠データなど)を収集し、分析の準備を整えます。
  2. ヒアリングと現状分析
    収集した資料をもとに、法令順守の状況や現場運用の実態を詳細に分析します。具体的には、労働時間管理の適正性、賃金計算の正確性、安全衛生管理の状況などを確認します。
  3. 課題の特定
    現状分析に基づき、法令違反のリスクや運用上の問題点を特定します。また、問題の原因や影響範囲を明確にすることで、改善策の提案を効果的に行います。
  4. 改善提案と実行支援
    監査結果を報告し、具体的な改善提案を提示します。その後、必要に応じて規程の改定や運用体制の見直し、従業員教育の実施などをサポートします。
  5. フォローアップ
    改善策が効果的に実施されているかを定期的に確認し、必要に応じて追加のアドバイスを行います。

労務監査の主な項目

労務監査では、以下の項目を中心にチェックを行います。

  1. 労働契約の適正性
    ・労働条件通知書の作成・交付状況
    ・労働条件通知書の記載内容が法令を満たしているか
  2. 就業規則の内容と運用
    ・就業規則や各種規程が最新の法令に適合しているか
    ・規則が実際の運用と乖離していないか
  3. 労働時間・休暇管理
    ・残業時間の適正管理
    ・36協定の締結と届出状況
    ・有給休暇の取得状況
  4. 賃金・手当の管理
    ・時間外労働手当、深夜手当、休日手当の支給が適正か
    ・同一労働同一賃金に基づく非正規雇用者の待遇
  5. 社会保険・労働保険の手続き
    ・社会保険加入手続きが適正に行われているか
    ・雇用保険の未加入者がいないか
  6. 安全衛生管理
    ・職場の安全衛生体制の構築状況
    ・ハラスメント防止措置の実施状況
  7. 人事労務関連のトラブル対応
    ・過去のトラブル事例の確認と再発防止策
    ・問題社員や休職者の対応フローの適正性
  8. その他特定の課題
    ・業種や企業規模に応じた個別課題の監査

労務監査の成果と期待される効果

労務監査を行うことで、労務リスクを未然に防ぎ、法令違反を回避することができます。また、社員の安心感を高め、働きやすい職場環境を構築することで、企業の生産性やブランド力の向上が期待されます。企業の現状を正確に見える化し、具体的な改善を図ることが、長期的な成長に繋がります。

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